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犬の副腎腫瘍に対する外科手術

こんにちは。ノア動物病院院長の平子です。

今回は犬の右副腎に発生し、後大静脈への浸潤と腫瘍栓の形成が認められた症例をご紹介します。

副腎腫瘍の中には、周囲の重要な血管に浸潤し、血管内に腫瘍栓を形成するものがあります。このような症例では腫瘍そのものだけでなく、血管との位置関係や全身状態を十分に評価したうえで、慎重に治療方針を検討する必要があります。

今回の手術では術前のCT検査による評価に加え、麻酔管理の専門家にもご協力いただき手術に臨みました。

■副腎腫瘍とは

副腎は、左右の腎臓近くに位置する小さな臓器で、血圧や代謝など、体の様々な機能を調節するホルモンを分泌しています。

犬の副腎に腫瘍が発生すると、腫瘍の種類にもよりますが、ホルモンを過剰に分泌することによってさまざまな症状が現れることがあります。また腫瘍が大きく、周囲の組織や血管に浸潤することで、治療が複雑になる場合もあります。

特に右側の副腎は解剖的に後大静脈という重要な血管に近接しています。腫瘍が後大静脈に浸潤し、血管内に腫瘍栓を形成している場合は手術による出血や血液循環への影響を考慮する必要があり、術前の詳細な評価と慎重な手術計画が重要となります。

■症例紹介

今回の症例はシーズーのピョン吉ちゃん11歳です(今は12歳)。

健康診断にて肝数値の上昇が見つかりました。エコー検査にて右副腎の腫れがあり、さらには血管内に浸潤している可能性があることがわかりました。その後尿検査やホルモンの血液検査で副腎皮質という部分からのホルモンが過剰になっていることもわかりました。

飼い主様と相談し、ホルモンの分泌を内服で抑えながらCT検査を実施し、検査結果によっては手術を実施する方向でいくこととなりました。

■術前CT検査による評価

CT検査の結果、やはり右副腎に発生した腫瘍が後大静脈にわずかに浸潤し、血管内に腫瘍栓を形成していることが確認されました。

このような症例では、腫瘍の大きさや転移の有無だけでなく、血管との位置関係を把握することが重要です。検査によって得られた情報をもとに。手術に伴うリスクを考慮しながら、慎重に手術に向けた準備を進めました。

■輸血に備えた準備

今回の手術では、腫瘍の摘出による出血のリスクが高いことが予想されました。そのため、万が一の出血に備えて、手術前から輸血の可能性を考慮した準備をおこないました。

当院では、必要な場合に迅速かつ適切な輸血対応ができるよう輸血班を設けています。動物の命を守るための医療体制を整える一方で、輸血に協力して売れる動物たちへの負担や、動物愛護の観点も大切にしながら、適正な輸血医療に取り組んでいます。

■麻酔科の専門医と連携した手術

今回の手術の麻酔管理については、酪農学園大学の麻酔科准教授の伊丹先生にご協力をお願いいたしました。術前準備としての麻酔のシミュレーションから当日の麻酔管理にいたるまで、ご指導をいただきながら手術に臨みました。

副腎腫瘍の場合、出血による全身循環への影響のほかに、ホルモンの過剰な分泌による全身循環の変化にも対応する必要が出てくる可能性があるため、周術期の安全管理は非常に難しいものとなります。そのため、輸血の用意やその他様々な薬剤の事前準備、術前シミュレーションなどしっかり準備をしたうえで手術に臨みました。

■手術の様子

手術では、腫瘍周囲の組織との癒着が強く、慎重な操作が必要となったため手術時間は長くなりました。一方で、周囲の血管や組織との位置関係を確認しながら丁寧に操作を進めた結果、出血は最小限に抑えることができ、また麻酔管理も安定して実施することができました。事前に輸血は用意していましたが、幸いにも実際には輸血を行うことなく手術を終えることができました。

赤丸が実際の副腎腫瘍部分です。

■術後の様子

術後の経過は良好で、術後2日目には無事退院されました。また、術前で異常値だったホルモンの値や肝臓の値は正常値となり、術後半年たった現在も別のことで通院されていますが、元気なお顔を見せてくれています。

■当院の取り組み

今回の症例のように、腫瘍が重要な血管に浸潤し、血管内に腫瘍栓を形成している場合は術前の詳細な画像診断、慎重な手術計画、麻酔管理、出血への備えを含めた総合的な対応が求められます。当院では軽度な症例から重度な症例まで、それぞれの状態を丁寧に評価し、必要に応じて専門家との連携も図りながら治療に取り組んでいます。

また、輸血に対しては輸血班を設け、安全かつ適切に対応できる体制を整えています。

病気や治療についてご不安なことがありましたら、お気軽にご相談ください。

ピョン吉ちゃんがんばったね!いつも元気な笑顔を見せてくれてありがとう!

飼い主様、掲載のご許可ありがとうございます。

これからもサポートさせていただきますね。

ノア動物病院 院長 平子

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