
こんにちは。札幌市豊平区のノア動物病院です。
猫ちゃんの「尿石症」というと、血尿や、何度もトイレに行く様子を思い浮かべる方が多いかもしれません。
しかし、結石ができる場所によっては、排尿の変化が目立たず、食欲や元気の低下をきっかけに見つかることもあります。
なかでも、腎臓から膀胱へ尿を運ぶ管が詰まる「尿管閉塞」は、腎臓の働きに大きな影響を及ぼす病気です。
今回は、猫の尿路結石の種類や必要な検査、当院で実施したSUB設置術の症例についてご紹介します。
尿管閉塞とは?「尿道閉塞」との違い
尿は腎臓で作られ、尿管を通って膀胱にたまり、尿道から体の外へ排出されます。
- 尿管:腎臓と膀胱をつなぐ管
- 尿道:膀胱と体の外をつなぐ管

「尿管閉塞」は、結石などによって腎臓から膀胱への尿の流れが妨げられた状態です。結石のほか、尿管が狭くなることなどが原因になる場合もあります。
尿が流れにくくなると腎臓に負担がかかり、腎機能が低下するおそれがあります。
片側の尿管が詰まっていても、反対側の腎臓から尿が作られ、
一方、「尿道閉塞」は膀胱から体の外への通り道が詰まる病気です。何度も排尿しようとするのに尿が出ない場合は、緊急の対応が必要です。
寒い時期に気をつけたい、猫のおしっこのトラブル
猫の尿道閉塞は、冬に発生が多くなるという報告があります。
ただし、これは「尿管閉塞や、すべての尿路結石が冬に多い」という意味ではありません。尿管閉塞は季節を問わず注意が必要な病気です。
寒い時期も飲水場所やトイレを使いやすく整え、毎日の尿量や排尿回数、食欲などを確認しましょう。
何度もトイレに入るのに尿がほとんど出ない、
猫の尿路結石には、どんな種類がある?
猫でよくみられる結石には、「ストルバイト結石」と「シュウ酸カルシウム結石」があります。

ストルバイト結石
主に膀胱などでみられ、獣医師の管理のもと、療法食によって溶かせる場合があります。
ただし、尿の通り道が詰まっている場合は、食事だけで経過を見ることはできません。まず閉塞への対応が必要です。
シュウ酸カルシウム結石
猫の腎臓や尿管にできる結石の多くを占める種類です。
シュウ酸カルシウム結石は、食事や薬で溶かすことができません。 結石の位置や大きさ、閉塞の有無、腎臓への影響に応じて治療を検討します。
なお、尿に結晶が見つからなくても、結石がないとは限りません。また、結晶の種類だけで結石の成分を確定することもできません。結石を回収できた場合は、成分分析が再発予防の参考になります。
どんな猫に多い?性別・品種との関係
尿道閉塞は、尿道が細いオスの猫で起こりやすい病気です。
一方、尿管閉塞はオス・メスのどちらにも起こります。 尿道閉塞と同じように「オスに多い病気」と考えないことが大切です。
シュウ酸カルシウム結石では、ペルシャやヒマラヤンなど、一部の品種で発生リスクが高いという報告があります。ただし、雑種を含め、どの猫にも発生する可能性があります。
性別や品種だけで判断せず、年齢や持病、検査結果などを合わせて評価します。
尿管閉塞でみられる症状
尿管閉塞では、次のような変化がみられることがあります。
- 食欲が落ちる
- 元気がなくなる
- 吐く
- 隠れて過ごす時間が増える
- お腹や背中を痛がる
これらは尿管閉塞に特有の症状ではなく、ほかの病気でも起こります。明らかな症状がなく、画像検査で見つかる場合もあります。
慢性腎臓病のある猫ちゃんで急に体調や腎数値が悪化した場合にも、原因の一つとして尿管閉塞を確認することが大切です。
診断に必要な検査

診察に加え、次のような検査を組み合わせて判断します。
血液検査
BUNやクレアチニンなどで腎機能を評価し、カリウムなどの電解質、貧血の有無を確認します。
全身状態によっては、血液ガス検査で体の酸性・アルカリ性のバランスも調べます。
尿検査
尿の濃さやpH、血液・結晶の有無などを確認します。必要に応じて、細菌感染を調べる尿培養検査を行います。
尿検査だけで、尿管結石や尿管閉塞を否定することはできません。
超音波検査(エコー検査)
腎臓内で尿が集まる「腎盂」や尿管の拡張、結石の有無などを確認します。治療中の変化を追うためにも用います。
レントゲン検査・追加の画像検査
結石の位置や大きさ、数などを確認します。小さな結石などは分かりにくい場合があるため、超音波検査と組み合わせ、必要に応じてCTや造影検査などを検討します。
猫の尿管閉塞の治療とSUB手術
治療では、閉塞の状態と腎機能、全身状態を評価しながら、尿の流れを回復させる方法を判断します。
点滴などの内科治療で改善する場合もありますが、閉塞が続く場合や腎臓への影響が大きい場合には、手術などの処置が必要です。内科治療中も、漫然と待つのではなく、繰り返し状態を評価します。
外科的な治療には、尿管から結石を取り除く方法や、別の尿の通り道を確保する方法などがあります。
SUB設置術とは?
SUB設置術は、専用のカテーテルで腎臓と膀胱をつなぎ、詰まった尿管を迂回して尿を流す手術です。
結石を溶かす手術ではなく、尿の通り道を確保して、
手術後も、血液検査や超音波検査、デバイスの洗浄など、継続した管理が必要です。感染やデバイスの閉塞などの合併症にも注意します。
また、尿の流れを確保できても、すでに低下した腎機能が十分に回復するとは限りません。治療後の経過は、腎臓の障害や持病、全身状態などによって異なります。
当院の症例:猫の尿管閉塞に対するSUB設置術

当院で、左尿管閉塞に対してSUB設置術を行った猫ちゃんの診療内容をご紹介します。
検査で分かったこと
慢性腎臓病のある猫ちゃんで、血液検査では腎臓の働きを示すBUNやクレアチニンが著しく上昇し、体内が酸性に傾く「代謝性アシドーシス」も認められました。
超音波検査では左の腎盂が拡張しており、尿管結石による閉塞が疑われました。これらの結果から、尿管閉塞に伴って慢性腎臓病が急激に悪化したと評価しました。
なお、尿検査では結晶を認めませんでした。尿に結晶が見つからなくても結石がある場合があり、画像検査と組み合わせて判断することが大切です。
入院管理とSUB設置術
入院後は点滴などによる全身管理を行い、血液検査や超音波検査で状態を確認しました。
腎数値には一部低下がみられたものの、重い腎機能障害が続いていたため、左腎臓と膀胱をつなぐSUB設置術を実施しました。
SUBは、詰まった尿管を迂回して尿を流すための仕組みです。結石を溶かしたり取り除いたりするのではなく、新たな尿の通り道を確保します。
尿管閉塞の治療では、尿の流れへの対応と、腎機能・全身状態の管理を並行して行うことが重要です。 また、手術によって低下した腎機能が必ず回復するわけではなく、術後も継続した検査と管理が必要になります。
札幌で猫の尿管閉塞・手術についてご相談をお考えの方へ
ノア動物病院では、猫の尿路結石症の診療や、尿管閉塞に対するSUB設置術を行っています。
手術が必要かどうか、どの治療方法が適しているかは、閉塞の状態や腎機能、全身状態などによって判断します。
「尿は出ているけれど、食欲や元気がない」「腎臓の数値が急に悪くなった」など、気になる変化がある場合は、早めにご相談ください。
尿が出ない、何度も排尿しようとして苦しそう、ぐったりしている場合は、オンライン予約の空きを待たず、まずお電話ください。 【緊急電話:080-9611-8108】
診療時間外は、対応可能な救急動物病院へご相談ください。





