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鎮静や全身麻酔は怖いもの??

こんにちは、獣医師の山中です。

動物病院では日々、鎮静や全身麻酔が行われます。

獣医師から
「検査や治療のために鎮静や全身麻酔が必要です。」
と言われた際、
少し抵抗感や不安感を覚える飼い主様もいらっしゃるかと思います。

そこで、麻酔とはどのようなものなのか少しずつご紹介できたらと思います。

今回はよく聞く”鎮静”と“全身麻酔”の違いについてお話します。

 

目次

鎮静と全身麻酔の違い

意識はどうなる??

循環器系や呼吸器系への影響は??

痛みへの反応は??

動物への負担は??

麻酔中、うちの子どうなってるの??

まとめ

 鎮静と全身麻酔の違い

鎮静と全身麻酔はどちらも麻酔の一種です。

鎮静は全身麻酔の一部であり、
各種鎮静薬は

全身麻酔の前投与(麻酔を安全に実施するために最初に投与する薬)

として使われます。

私がご家族に説明する場合、

「鎮静は意識をボーっとさせて、
痛みの伴わない、あるいは軽い痛みの伴う操作を
リラックスして乗り越えてもらうための処置です。」

「全身麻酔は意識・記憶・痛みをなくし、
正確さが求められる検査や痛みの強い操作を
安全に乗り越えてもらうための処置です。」

とお伝えすることが多いです。

鎮静と全身麻酔の違いについて簡単に表にまとめてみました。

 

次の項からは飼い主様からよくいただく不安点についてご説明していきます。

 意識はどうなる??

全身麻酔では、動物は意識を完全に消失します。
鎮痛・筋肉の弛緩・意識の消失・反射の抑制・健忘が起こり、
痛みを知覚せず記憶が残らない状態となります。
スムーズな意識消失は、複数の薬剤の混合で安全に行えます。

鎮静では、意識は消失せず抑制されるのみとなります。
軽度ではリラックス、
中程度では非常に眠いが周りからの刺激に反応できる、
深い鎮静は周囲の環境に無頓着になり刺激に反応しにくい状態となります。

 

 循環器系や呼吸器系への影響は??

全身麻酔では、自発的な呼吸や心血管系および反射を抑制します。

鎮静では、通常は心血管系に影響はありません
生理的な反射がなくならないので自分で呼吸をし続けることができます。
深い鎮静の場合は呼吸が弱くなるため呼吸の補助が必要な場合があります。

 

痛みへの反応は??

全身麻酔では、痛みを知覚せず記憶に残らない状態となります。

鎮静では、痛みを知覚するため、痛みを伴う操作に対して反応が起こります

 

 

動物への負担は??

全身麻酔では、動物への負担は様々になります。
影響する因子としては、

動物の全身状態
処置内容
処置時間
昇圧剤や鎮痛剤への反応性

などがあります。

 

鎮静では、比較的軽度に負担で済む場合が多いですが、

心肺機能に異常がある動物
意識の低い動物
短頭腫などの気道が閉塞しやすい動物

では注意が必要になります。

麻酔中、うちの子どうなってるの??

全身麻酔では全身の生命維持機能が抑えられるため、
それをなくす、緩和する薬剤を使用します。

また、麻酔中は五感や各種モニタリング機器を使って

麻酔深度(麻酔の効き具合)
血圧・心拍数(十分な循環血液量を維持する能力)
換気(組織で発生した二酸化炭素を体外へ排出する能力)
酸素飽和度(酸素を取り込んで組織へ運搬する能力)
体温

などが十分であるか細かな麻酔管理を実施します。

▵麻酔モニター :麻酔薬濃度、血圧・心拍数、換気状態、酸素飽和度、体温などを画面上に映し出します。

▵麻酔記録用紙:五感で得た生体情報や麻酔モニターの情報を5分~毎に記録します。症例情報や麻酔計画も記入し、スタッフ間で共有します。

 

一見すると鎮静の方が手軽で怖くないように思われますが、
全身麻酔は、完全な意識消失を得られ、挿管による呼吸管理を行うことができます。

また、いろいろな作用機序の鎮痛薬を組み合わせることで、
痛みの強さに応じて比較的柔軟な対応が可能となります。

 

まとめ

一般的に、上記の違いを考慮しながら
動物の状態や処置内容によって鎮静・全身麻酔を使い分けています。

鎮静は比較的簡便で負担が軽いことが多いですが、
中程度~強度な痛みを伴う処置では不十分であり、
動物に恐怖や痛みを与えてしまいます。

それぞれの処置に適した麻酔方法を選択すること、
適切な薬を選択すること、
程度に合わせたモニターを行うことで
安全に治療ができます。

健康状態が不安定ななか麻酔をかけざるをえない動物は一定数存在しますし、
ご家族の心配は尽きないものと思います。

ご不明点がございましたらお気軽にご相談ください。

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