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肝臓腫瘤
こんにちは、獣医師の田村です。
先日、貧血で治療中のワンちゃんが、お腹が急に膨れてきたとのことで来院されました。
(貧血は、非再生性免疫介在性貧血(NRIMA)と言われる病気で長期でステロイドや免疫抑制剤を使用していました)
超音波検査などを実施した結果、肝臓に10cmを超える腫瘤(しこり)が見つかりました。
後日、肝臓腫瘤の精査のため、CT検査と生検を実施しました(↓の写真がCT画像になります)。
腫瘤からは肝細胞が採取され、
①肝細胞癌
②肝細胞腺腫
③結節性過形成
の可能性が考えられました。
最終的な診断は、腫瘤を手術で切除し、腫瘤の病理検査をしないとわからないことが多いです。
また、②と③は、良性病変となりますが、お腹の中で出血するリスクもあり、貧血治療中のワンちゃんにとって、突発的な出血は避けたいところになります。
肝臓腫瘤から出血した症例のうち約1/4は良性病変だったとの報告もあるため、ある程度大きな肝臓腫瘤に関しては、診断と治療を兼ねて摘出手術という治療方法も検討する必要があります。
手術自体のリスクを説明したうえで、オーナー様も手術を希望されましたので、肝臓腫瘤摘出を実施しました。
また、今回は脾臓にも腫瘤があったため、同時に脾臓摘出も実施しました。
脾臓摘出には、貧血治療のための側面もあり、今回は積極的にすすめました。
腫瘤が大きく、長時間の手術となってしまいましたが、ワンちゃんも頑張ってくれて、無事腫瘤を摘出することができました。
幸いにも肝臓腫瘤の診断は結節性過形成で、脾臓の腫瘤も良性病変でした。
術後の経過も良好で、いまは元気にご家族のもとで過ごされています。
また、脾臓摘出により貧血治療でずっと続けていたステロイドや免疫抑制剤も休止することができています。
今回のワンちゃんでもそうでしたが、肝臓腫瘤や肝臓腫瘍の手術では、手術時間が長くなってしまう傾向があります。
海外の獣医の先生の間では、よく肝臓腫瘤や肝臓腫瘍の摘出に医療用のホッチキス(ステープラー)を用いている方がいるようで、手術時間短縮に一役買っているそうです。
国内でも使用されている先生がいますので、当院でも準備するようにしました(↓)。
肝臓腫瘤摘出症例の全例で使用できるわけではないうえに、高価な器具とはなりますが、手術時間短縮によりワンちゃんの負担を少しでも減らせることができればと、期待しています。